HEAVEN -天国の階段- (全106話)

■未熟者

HEAVENを出るのが大体、6時…
家に着くのは7時…

「カンナ、こんな遅くまで何してたの!」

いつもなら仕事でいないはずのお母さんが玄関で待ち伏せ。

『ちょっと… 友達の所…』
「もしかして、いつもこんなに遅いの?! 誰の家なの?!」

「もしかして」なんて、何だか笑っちゃう。
「初めて知りました」みたいな…

そりゃそうだよね?
だってお母さん、いつも家にいないんだもん。



本当…
たまにいるとウザイ…





「ウザイってー、自分の母親でしょ?」
『愛里は思った事ないの?』
「ないわよ。 母親だけがこんな私を理解してくれたんだもの。」

愛里はニコっと笑うと綺麗にマニキュアを塗られた自分の指を見つめた。

…そっか…
今は開き直ってる愛里でも、きっと昔は自分の性別に悩んだだろう…

『お母さん… 愛里を責めなかったんだね…』
「さぁ… もしかしたら責めたかったかも知れないわね… でも責めなかった…」

愛里の優しい瞳の奥に何かが見えた気がした。
優しい母親の像…?

『反抗期…かなぁ… 昔は仲良かったのに…』

将来の夢は「お母さん」
私にも確実にそんな時があった。

いつからだろう…
お母さんの吐く吐息までもが苦痛に感じるようになったの…



『カンナ、そろそろ送ろうか?』

客足が少し途切れた5時半。
空になったボトルを流しに入れながら恭平が言った。

『送る…?』
『電車だと1時間もかかるだろ? 車なら30分で帰れるし。』

まさか…
私がお母さんに怒られたから…?

「それでマリア、今日は飲まなかったのね?」
『まぁね、よそのお嬢さん乗せて事故したらシャレになんないから。』

恭平はかけてあった車のキーを取ると、私の肩をポンと押した。

『…ごめんね…?』

なんて迷惑なんだろう…
私が恭平みたいに大人だったら、こんな事までさせなくて済むのに…

自分で車で帰る事も出来るのに…

『行くよ、カンナ。』
『…うん…』

なんてちっぽけな人間なんだ…?
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