HEAVEN -天国の階段- (全106話)

■美しい故

苦くて辛くて…
大人って何でそんなのが好きなんだろう…
やめられないんだろう…

ずっとそんな風に思ってた。

でもこんなに甘いお酒もあったのね…?



「調子に乗るんじゃないわよ小娘! そんな事言われるうちが花なのよ!」

愛里は私の愚痴を聞くなり椅子に足を乗せて力説した。

『なぁにが花よッ 経験豊富ってねぇ、言い換えればヤリマンって事よ?!』
「結構じゃな〜い! やりたい奴にはやらせとけってんだわ!」

やら…ッ
ってか問題はそこじゃないっての!!

『まぁ、愛里… 君には理解出来ない悩みなんだよ…?』

少し離れた所でワインを飲んでいた恭平は、そう言いながら立ち上がり私の髪を手に絡めとった。

「何よ、マリアには解るって言うの?」
『ね、カンナ… 美しい者にしか理解出来ない悩みだよね?』

髪がパサッと肩に落ちる感覚…
その感覚に魅せられ、咄嗟に愛里を庇うのを忘れてしまった。

「だから恵まれた人間なんて嫌いなのよッ!」

それがカンに障ったようで愛里は負け惜しみに近い台詞を恭平に吐く。

『カンナ? 気分悪い?』
『え…?』
『少しボーっとしてる。』

優しい恭平の声が少し遠く聞こえる。
まるで体とは別の世界に心が行ってしまったかのよう…

「マリア、さっきのカルーアってどの位で割ったの?」
『そりゃ、いつも店で出す通りに…』
「もしかしてこの子、お酒飲むの初めてなんじゃない?」

木の椅子なのにフワフワ、フワフワ…
なぁーんか気持ちいー…

『飲みやすくても、そんなに弱い酒じゃないからねー… カルーア…』

恭平の深い溜め息も全然、気にならない。

本当に天国にいるみたいで不思議な感覚…

【HEAVENへようこそ】

あ、そっか…
ここってHEAVEN(天国)だった。
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