HEAVEN -天国の階段- (全106話)

■神無

白い文字の書かれた茶色のロンT。
その上にさらっと羽織った皮のジャケット。

そして濃いめのGパンに先の尖った靴…

『私服… 意外だった…』

オカマバーのマスターなんてやってるものだから、もっと個性的な服装を想像してた。

『何を期待してたの。 俺だって普通に21の男なんだからさぁ…』
『だってー… HEAVENのマスターってくらいだもん、もっと神様的な服装かと…』
『神様?』

私の言葉に恭平は苦笑気味に聞き直す。

『…天国で1番偉いのは神様かなって…』

まるでお伽話を話してるみたい…
自分で言ってて恥ずかしくなる。

『…HEAVENに神様はいないよ。』
『え…?』
『最近はカンナがいるから。』

…どういう意味…?

いまいち理解出来ず固まっていると、恭平はフッと笑ってみせた。

『神無月って各地の神様が一カ所に集まって会議する月なんだよ? だからその間、神様はお留守なわけ。』
『へ、へぇ…』

自分の名前にそんな意味があるなんて…
全く知りもしなかった。

『…ってかカンナって「神無」じゃないし。 カタカナだよ…』
『どっちでもいいじゃん。 可愛い名前なんだから…』

恭平はそう言うと、無邪気に笑ってみせる。

珍しー…
こんな風に笑うなんて…

そんな風に思っていると突然、恭平がグイッと手を引いた。

『それより何処か寄っていくか。 そんな格好じゃ誤解されるし…』
『誤解…?』
『流石に地元を制服姿の女連れて歩けないっての!』
『…ふーん…』

いまいち大人の事情ってのは解んないけど…
恭平にとって私のこの格好は不都合だってのは解った。

『大人って大変だねー…』

一見して自由に見える大人も私達、子供も…
大して自由じゃないんだな…って思った。

『だからHEAVENを作ったんだよ。 あそこは性別も年齢も… 名前すら必要ないでしょ?』
『性別も…年齢も…?』

だから人間はHEAVENを求めてる…?
ルールも規則もない天国を…
< 20 / 107 >

この作品をシェア

pagetop