HEAVEN -天国の階段- (全106話)

■不思議な感情

キスの時もそうだった…

恭平の腕の中で私は無力になる。
抵抗しようという気すら起きない。

『あの… 恭平…?』

そっと恭平の背中に手を回し、長めに伸びた襟足に触れてみる。

柔らかくてサラサラの髪…

本当に男の人じゃないみたい。

『ごめん… 可愛くてつい…』
『う、ううん…ッ』

さらりと言われた「可愛い」の単語に顔が熱くなる。

本当、騙されやすいタイプだと思う。

『店員さん呼んでくるから、それ買って何か食べに行こうか。』

恭平はそう言って、いつもの大人びた笑みを見せるとレジに行ってしまった。

しばらくして店員さんがやってきて値札をハサミで切ってくれる。

『んじゃ、行こっか。』
『え…? お会計…』

私、まだ払ってない…

『いーの、俺からのプレゼント…』

ポンッと軽く頭を押されたかと思うと、耳元で囁かれる言葉…

プリティウーマン…

そんな気分は今までに味わった事がない。
何とお礼をしたら自然だろうか…

『気に入らない?』

恭平も不自然な態度に不安を感じているよう。

『ううんッ すごく嬉しい!…けど…』

「嬉しい」と「申し訳ない」がごちゃ混ぜ…
複雑な気分だ。

『んじゃ、いいじゃん。 行こ!』

まだ戸惑っていた私の手をとり、恭平は背中を向けた。

男の人と手を繋いで歩くなんて事…
もしかしたら初めてかも知れない。

『…誤解…されるよ? 彼女に…』
『残念でした。 俺、彼女いないの。』
『え…?』

…いないの…?

『今は彼女よりHEAVEN優先。 駄目?』

駄目…じゃないけど…

何で私…
ホッとしちゃってんだろう…
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