HEAVEN -天国の階段- (全106話)

■偶然の再会

それはまるで、夢のよう…

綺麗な服を着て、綺麗な男の人に手を引かれ…
美味しいものを口にする。

そして気付かぬ間に太陽は沈んでいた。

長時間を短時間だと思える夢の時間…


『あ、店の事忘れてた。』

9時を知らせる鐘が鳴り響く中、恭平がそう呟いた。

『マスターがそんなんでいいの?』

忘れられるなんて、信じられない…
自分のお店なのに…

『たまにはいいでしょっ 愛里もいるし!』
『…適当ー…』

何気なく出た私の言葉に恭平は笑顔を見せる。

『適当は成功の秘訣だよ。』

…なんて言って…

でも否定や反論は出来なかった。

バーのマスターとして成功している人物。
そんな恭平からの言葉だから…





「あ、マリア!」

しばらく歩いていると、そんな呼び声が聞こえる。

声は後ろから聞こえ、私達は足を止めた。

「珍しいじゃんっ 今、営業時間じゃないの?」

今風のキャピキャピした女の子。
デニムのミニスカートからは長くて綺麗な足が地に向かって伸びていた。

『今日はサボりー。 そっちは?』
「うちらは飲み会! そーだっ 高校の連ればっかだしマリアも来たら?!」

長く白い手を恭平の腕に巻き付け彼女は笑う。

…彼女…じゃないか。
さっき「いない」って言ったばかりだし…

『いや、今回は―…「ってか何、この子!!」

恭平の返答もお構いなしに女の人は私に視線を向ける。

よく見ると、顔立ちも今風で…
まるでファッション誌のモデルのよう…

「可愛いじゃん!! 何処で拾ったの?!」
『拾ってねぇて… 店のお客さん…』
「えッ 未成年っしょ?! ってか彼女もおいでよ、飲み会!」

今まで、これほど強引な人はいただろうか…

恭平と繋がっていた手は一瞬で私の体を捕らえ、引きずるようにして近くの居酒屋に入っていく。

途中、恭平の止める声がしてもお構いなしに彼女の足は地を蹴っていった。
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