HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■居酒屋内
「髪さらさらー! 染めた事ないの?!」
「ヤバイくらい肌、綺麗なんだけど!! 何使ってんのー?」
居酒屋の中はざっと6人程の男女が個室内で酒を交わしていた。
私はその中の2人の女の人達の玩具…
髪を触られたり、肌を擦られたり…
「マリアっ この子の髪、巻いてもいー?」
「あ 私、メイクしたい! マリアいい?」
…ってか何で恭平に聞くのですか…?
私、恭平の所有物じゃないですよ?
『あの、皆さんは…』
「マリアの友達ー♪ 私、ユカね!」
ユカさんはそう答えると鞄から太めのコテを出し電源を入れた。
と、思ったら次はヘアワックスにスプレー。
小さな鞄はまるで四次元ポケットのように、何でも出てくる。
「マリアってー、どんなのが好き? お水? ギャル?」
何故、二択なのか…
それはさておき、恭平はすでに何杯かの酎ハイを飲んでいるようだった。
『何でもいーけど、程々にしてよ? 俺が連れて帰るんだから。』
「任してよー! マリア好みにしちゃうんだから!」
得意げに私の髪をコテに巻き付けていく姿…
窓ガラス越しに見て少し不思議な気分だった。
「今のうちにメイクしちゃうね!」
突然、窓ガラスとの間に割って入ったのはメイク担当(?)の人。
彼女も相当、気合いの入った格好だ。
「私、マイね♪ 後でアドレス教えてよ!」
マイさんはニコっと笑うとメイク道具を机に並べ、目を閉じるよう指示した。
真っ暗な視界の中、男の子達の笑い声が聞こえる。
それにマイさんの香水だろうか…
甘いフルーツ系の香りがする。
それが香ってしまうほど、傍にいるんだ…
『…不思議です… 友達ともこんな風にした事ないのに…』
「えー? 学校でやり合ったりしてない?」
『はい… 校則で化粧は禁止だから…』
私がそう答えた直後、7人の呼吸までもがピタリと止んだ。
そして次の瞬間、ブッと全員が笑い出す。
「ちょっとマリアー! カンナちゃん可愛すぎなんだけど!! 私、持ち帰ってい?」
私は何か可笑しな事を言ったのだろうか…
しばらく笑いが止む事はなかった。