HEAVEN -天国の階段- (全106話)

■過去の悔恨
○Side MARIA

朝は必ずやってくる。
君がいなくなってしばらくは、そんな当たり前の事が許せなかった…




『…んー… 朝…?』

窓から差し込む光を欝陶しいというように手で避け、カンナは口を開く。

『おはよ。 今日は月曜日だよ?』

そんなカンナの髪を撫で、俺はベッドに腰を下ろした。

『月曜日…って学校!!』
『うん、学校。』
『って恭平?! 何でまた?!』

大分、混乱しているのか…
カンナは真っ赤になりながら髪でクシャッと顔を隠した。

『酔い潰れたまま家に帰すの悪いと思って… そんでここに。』
『酔い潰れ……私、また無断外泊しちゃった…』

ようやく冷静さを取り戻したかと思えば、今度は顔を青くする。

見ていて飽きないな…

『マイがカンナの家に連絡入れたから平気だよ…?』
『…マイさんが?』
『そう、マイの家に泊まった事になってる。』
『そ、そうなんだ…』

あ、今度は安心したみたい。

カンナの表情豊かな所は嫌いじゃない。
俺が豊かに表現できない分、代わりに表現してくれそうで…






午前7時半…
辺りが騒がしくなる。

学生達やサラリーマンの出勤時間だ。

『HEAVENに用があるから途中まで一緒に行こうか。』

俺は玄関に鍵をかけ、カンナと共に家を出た。



『ね、見て恭平。』

途中、あの公園前を通った時にカンナが俺の腕をクンと引いた。

『今日も花が代わってる! 毎日、代わってるの恭平は知ってる?』

今日はピンク、昨日は黄色…
その前は白…

勿論、知ってるよ。
毎日、俺が代えてるんだから…

『私もこんないい旦那様が見つかるかなぁ…』

カンナは立ち止まり小さく手を合わせると、そう呟いた。

『…カンナならもっといい人見つかるよ…』

もっともっと…
紗羅の分まで幸せに…

俺がそう願う事すら申し訳ない気がする。

だって俺は…
あの日、紗羅を守れなかった…
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