HEAVEN -天国の階段- (全106話)

■天国の階段

『おはよう!』

この変哲もない言葉で、また今日が始まる。

学校行って帰って…

そんな暮らしにも、「たまに」変化が訪れる。


「角崎さん、話があるんだけど…」

彼は伊藤くんといって学年でも人気の高い爽やか少年。

まさか私を好きだったなんて想像もつかなかった。

でも私、知らない人と恋人になれるほど器用じゃないの。

『ごめんなさい… 他に好きな人がいるから…』

そんな存在は正直いない。
だけど1番、優しい断り方だと思ってる。



でもそんな気遣いも無意味に終わった。

「カンナって調子乗ってない?」
「好きな人がいるなんて言っちゃって… 素直に嫌いだって言えばいいのにね。」

高校入ってから、ずっと友達だと思ってた2人の本音を知った。

「ってか昨日の合コン、当たりだったねー!」
「ねー! カンナ外して正解!」

思い起こせば、私は合コンにも誘われた事がない。

2人にとって私は何なのか…
いくら考えても答えは出ない。

ただ親友ではないのは確かだった…


苦しい…
悔しい…

寂しい…

毎日、毎日それの繰り返し…
いつになったら終わるの?

死んだら終わる…?




「ねぇ、角崎さん。 友達からも駄目かな…」

帰り道、これは偶然でなく待ち伏せされたと言えるだろう…

あの公園通りから伊藤くんが姿を表した。

『いいけど… それでも私、答え変わらないと思う。』
「それでもいいよ… 角崎さんの好きな人ってどんな奴?」

好きな人…
いないと知ってて聞いてるの?

『すごく素敵な人…』
「いくつ? 同じ学校?」
『違うよ。 年上…』
「年上? じゃあ大学生?」

苦しい苦しい苦しい…ッ
息が詰まる。

『ごめんッ 私、帰る!』

誰といても誰と話しても息が出来ない…ッ
何処かに行きたい!

『あッ!!』

夢中で足を回しすぎて縺(モツ)れてしまう。
咄嗟(トッサ)に地に着いた手からは真っ赤な血が滲(ニジ)んでいた。

『…真っ白…』

目の前に広がるのは足跡1つない真っ白な5階段…

【HEAVEN】

それは天国への階段…
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