HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■震え

午後6時…
茜と友利は相変わらず恭平の傍にべったり。

あと2時間…
今日はこのままお別れなのかな…



「私達もお店行っていいですかー?」
『うん、大人になったらね?』

恭平は2人の言葉に笑顔ではぐらかし…
決してハッキリと断ったりしない。

それが妙に腹立たしい…

所詮、恭平も1人の男。
若い女の子に囲まれ、嫌な気などしないだろう…


急に自分が場違いのような気すらして、財布を片手に玄関へ向かう。

玄関の扉を開けると北風がビュービューと吹き荒れていた。

『寒…』

どうせ私がいなくなったって3人は話に夢中で気付かないだろう。
そう思ったら自然と足が前に進んでいた。






恭平の家から少し離れた所にある自販機。
私はそこに500円を入れ、おしるこを買った。

中身が熱くて舌を火傷してしまい…
涙が滲む…

寂しい…
こんな想いは久しぶりだ。

最近はいつも恭平がいたから寂しいなんて想う間もなかった。

恭平恭平恭平恭平…
気付いたら頭の中、恭平でいっぱい。
いつの間にか無くせないものになってる。



ガードレールに座り、おしるこを半分ほど飲んだ時…
遠くの方から見慣れた人物が走ってくるのが見えた。

『…恭平…?』

何で?
何でそんな必死に走ってるの…?


『…ンナ…』

恭平は今にも絶えそうなくらいの息遣いで私の名を呟く。
そして私の体を強く抱きしめた。

『お願いだから…ッ 急に消えないで…』

切なく発した言葉…
微かに震えていた。

私を抱きしめる腕も、震えを感じる。

『ごめん…なさい…』

私はそこまでの事をしただろうか…
ただ勝手に家を出ておしるこを買っただけ。

ただ…それだけ…

『…で……ないで』
『恭平…?』
『…消えないで…』

ねぇ、恭平?
私は消えないよ?
何処にも行かないよ?

『お願いだから…』

ねぇ…?
貴方は何に脅えているの…?
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