HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■ヤキモチ

カタカタと小刻みに震えていた肩は少しずつ落ち着きを取り戻す。

『ごめん… 取り乱して…』

完全に震えが止まった後、恭平は顔を上げて言った。

『帰ろう、カンナ…』

そして私の手を引き、来た道をまた戻る。




帰ったらまた恭平は友利達に囲まれて遠退いてしまう。
そんなの寂しいよ…

『恭平… 私、テスト駄目かも…』
『うん? 何で?』
『だって…恭平が真面目に教えてくれないんだもん…』

嫌だ…
私、すごく嫌な子だ。

こんなのただのヤキモチだって解ってるのに…

『大丈夫だよ…? カンナは飲み込むのも早いし…』

違う。
そんな事言ってほしいんじゃない。

『もっと教えて。 手が空いた時でいいから…』

ただ恭平との時間がもっと欲しい…

『…いいよ。 ただし仕事は休めないからHEAVENでね?』

恭平はそう言って優しく笑うと、私の額をポンと押した。

『う、うん!』

どうしよう…
すごく嬉しい…ッ








「いらっしゃーい…ってカンナ!」

夜になってHEAVENに行くと愛里が笑顔で迎えてくれた。

「久しぶりじゃないの、勉強はどう?」
『ボチボチ… 今日はここで教えてもらおうと思って。』

実は恭平の家で勉強を教わるようになってからはHEAVENに寄っていない。
愛里の顔を見るのは3日ぶりくらいだ…

たった3日会わなかっただけの「久しぶり」が妙に嬉しく感じた。

『やっぱHEAVENっていうだけあるよねー!』
「何よ突然…」
『んーん♪』

あの白い階段は、ここに来る人にとって天国の階段…
だってこんなにも気持ちが穏やかになる。
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