HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■この恋

am0:00…
HEAVENの本日の営業が終了する。

愛里はせっせと店内を片付けると荷物をまとめて帰っていった。

『愛里ってここに寝泊まりしてるんじゃないんだ?』

シャーペン片手に恭平に尋ねる。

『ここはあくまでお店だからね。 俺達もそろそろ帰ろうか…』

すると恭平はそう言ってポケットから車のキーを出した。

今日はあらかじめ、お母さんに電話しておいた。
「友達と勉強会」と…

『つまんないな… もう帰るんだ…』

きっと帰ったら寝るだけだ…
私はもっと恭平といたいのに…

『詰め込むだけが勉強じゃないからさ。 今日は帰ろ?』
『…うん…』

そんな風に優しく言われたら「嫌だ」なんて言えないよ…











恭平の家に戻ると、シャワーを借してくれた。

バスルームで使ったシャンプーがすごくいい香りで、洗いたての髪を何度も嗅いでしまった。


恭平と何か進展があったわけじゃない。
だけどすごく照れ臭く感じる。

きっと今の私が恭平と同じ香りしてるから…


『お風呂ありがとー…』

脱衣所で髪も乾かし、部屋に戻る。

するとベッドのすぐ下の床で恭平が静かに寝息を起てていた。

洗いざらいで寝てしまったんだろう…
髪はまだ乾いていない。

『風邪ひくよー…?』

私は首に巻いていたタオルで恭平の頭をそっと拭いてみた。


5つも年上…
オカマバーのマスター…

この恋は上手くいくだろうか…

正直、私は恭平のプライベートをほとんど知らない。

何処から来て、何を思うのか。
もしかしたら恋人もいるかも知れない。
好きな人がいるかも知れない。

私なんかに好かれて迷惑じゃないだろうか…


『…隣…いいですか…?』

返事もないまま、私はベッドから布団を引きずり下ろし恭平と自分にかけた。

恭平の手が冷たいのを言い訳に、その大きな手を握りしめる。

『…おやすみー…』

せめて…
せめてあのキスの意味を知りたい。
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