HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■全て

優しいキスを交わし、改めて恭平の顔を見る。

女の私から見ても綺麗な顔…

『朝食…食べよ?』
『ん…』
『その後で学校まで送るから…』

恭平は優しい笑みを見せ、ベッドを下りた。

キスは…した…
でも気持ちを伝えたわけじゃない。

関係が変わったわけじゃない。

だけどすごく嬉しかった…






『学校、間に合いそう?』

交差点で信号待ち中。
恭平は煙草に火を着けて言う。

『大丈夫…だと思う…』
『そ、良かった。』

ハンドルに伸びる長い腕や、ブレーキを踏む足…

不思議な程、愛しく思う。


いつもの公園前通りを通り掛かった時、あの手向けの花が目についた。
今日はピンク…

小さなピンク色の花が穏やかな風に揺れていた。

『…ありがとう…』

それと同時、恭平がポツリと呟く。

『…何が?』
『傍にいてくれるって… 嘘でも嬉しかった。』

…嘘じゃないよ…?
本当に傍にいたいと思った。

恭平を支えたいと思ったの…

『でも今はテストの事だけ考えてな?』

恭平はそう言って笑うと私の髪をそっと撫でた。

『…ッ…』

溢れんばかりの愛しさ…
息が詰まるような感覚…

こんなの生まれて初めて。

手向けられた花の前で不謹慎な事を思ってしまう。

【恭平が死んだら私はどうなってしまう?】

きっと耐えられない。
貴女の旦那様のように花を手向けるなんて事、出来っこない。

こんな短期間で信じられないけど…
恭平は私の全てになってしまった…
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