HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■宝物

美味しいものを食べて他愛のない話をして…
そんな時間がとても好き。

『昨日、変なお客が来てさぁ… もう散々。』
『へぇ、どんなお客さん?』
『それがさ……』

正直、恭平とは話が合わない。
学校の話、仕事の話。
好きな事の話。

年齢が違うからどうも噛み合わない。
だけど、すごく楽しかった。



『ねぇ恭平、コレすごく綺麗…』

恭平の家へ向かう途中、道で開かれた露店に目が止まる。

『ブレスレット?』
『うん…』

ブレスレットと言うより、腕輪と言っていいデザイン。
細い輪の外側にはキラキラと光る石が埋め込まれている。

『こっちのチェーンの方がいいのに。』

恭平はそう言って可愛らしいチェーンのブレスレットを手に取った。

『でも… 私はこっちのが好き…』
『ふーん。 手錠みたいじゃね?』

て、手錠って…ッ

『どうせ女らしくないよーだ。 早く行こう!』

私は恭平を置いて先に歩き出す。

何かね。
無性に腹が立ったんだ。
恭平の好みに合わせられなかった事に…


『待てって… 意外と短気だな。』

少し遅れて追い付いた恭平はポンと私の頭に手を置く。

頭に少しひんやりとした感覚が…

『恭平、これ…』
『何? 欲しかったんじゃないの?』

細い輪に光る石…
さっき私が綺麗って言ったやつだ。

『あ…ありがとう! 宝物にする!』

ブレスレットを受け取り笑顔を見せる。
そんな当たり前の行動に対し、何故か恭平は複雑な顔を見せた。

『? どうかした?』
『いや… 何も…』

でもすぐにいつもの笑顔に戻る。

変な恭平。
でもまぁ…いっか。
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