HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■過去の惨劇

「私、将来は喫茶店を開きたいの。 小さくてもいいから、お客様から自分の家のように思ってもらえるお店…」

それは家庭に恵まれなかった彼女の夢。
全ての人達と家族のように交わえるお店…





テレビの中で縮小された彼女の半生が流れていた。






「家族になろっか。 もう寂しいなんて思わないように…」

そう言って差し出された小箱にはエンゲージリング。
その小さな輪に指を通し彼女は涙と共に頷いた。







「逃げろ…ッ」






「私の事…忘れていいからね…?」




知らなかった。
ニュースも見なかったし、新聞も読まなかった。
だから何も知らなかった。

彼女の幸せの半生も…
恋人の目の前で息絶えた事も…

彼女のお腹の中に、小さな命があった事も……



『酷い… 酷すぎるよねぇ?! 恭平…ッ』

神様なんていない。
いたら、こんな酷い仕打ちはない。

自然と溢れる涙で滲む視界の中で、テレビに映る犯人の似顔絵が見えた。

《犯人は決定的な証拠を残しているわ。》

超能力者がぽつり呟く。

《ネックレス…ネックレスのプレートに犯人の指紋。 これが犯人を追い詰める証拠になるはず…》

そう言って紙に書き出したのは、チェーンにドッグプレートがついたシンプルなネックレス。
犯人はそこに指紋を残したらしい。

《犯人はまだ近くにいるはずよ。 現場の近くに……

そう言いかけた時、「ブツン」と音を起ててテレビは光を失った。

『…寝ようか。』

電源を落としたリモコンをそっと机に起き、恭平は空き缶を持ってキッチンへ向かった。

『…おやすみなさい…』

滲んだ涙を腕で拭い、私はベッドに横になった…
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