HEAVEN -天国の階段- (全106話)

■HEAVENの正体

『ただいまー…』

うちに帰っても誰もいない。
両親は共働きで、お父さんなんて朝まで帰らない事もある。

親なら子供が安心して過ごせる場所…
作ってあげるべきじゃない?






『こんにちわぁ!』
「あっらー! 昨日の小娘じゃないの。」

放課後、HEAVENに立ち寄った私に愛里は驚いて立ち上がる。

『遊びに来ちゃった… 恭平は?』
「マリアなら買い出しに…って随分、馴れ馴れしいじゃない。」

流石、愛する人の事になると鋭いね…

『オカ……愛里は何でマリアって呼ぶの? 恭平って呼べばいいのに…』
「仕方ないじゃない。 最初、苗字しか知らなかったんだもの。」

ケロッと答える愛里。

『苗字…?』
「鞠亜恭平(マリア キョウヘイ)でしょ? あの子… 今さら名前で呼ぶのも違和感あるわ。」
『えッ マリアって苗字なの?!』
「そうよ? 聞いたんじゃないの?」

し、知らなかった…
だって聞いた事もない苗字なんだもん…


意外な話に驚いていると、後ろの扉が静かに開く音がした。

『ただいまぁ。 何、2人で盛り上がってんの?』

差し込む光の中、笑顔の恭平が入ってくる。

『恭平っ 買い物って何買いに行ってたの?』
『んー、切らしてたつまみとか色々とね。』
『つまみ?』

そう言えば、このHEAVENって一体何?
恭平はここの何なの?

『恭平と愛里ってここに住んでるの?』

素朴な疑問を投げかけてみると、恭平は目を丸くして固まった。

「違うわよ〜!」

そんな恭平の代わりに答える愛里。

「マリアはここのマスター、私は従業員! ちなみにHEAVENは健全なバーなのよ?」
『ば、バー?!』

そ、それってぞくに言う…

『オカマバーってやつ?!』
「オカマとは失礼ねッ 私は女って言ってるじゃないの!」

私、とんでもない所に来ちゃったかも…ッ

そう思いながら恭平の方を見ると、恭平はニコッと優しく笑った。

『改めて… HEAVENへようこそ。』

こうして私は知らず知らず、HEAVEN(天国)の階段を上ってしまった…
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