HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■未練

放課後…

「嬉しいなぁ、角崎さんと遊べるなんて…」

茜達と行ったカラオケ店。
何故か隣のクラスの男の子達が待っていた。

その中には以前、私に告白してきた伊藤くんが…
(4話目参照)

『茜。 どういう事?』
「だからぁ、気晴らしに遊ぼって言ったじゃん♪」

茜はそう言って無邪気に笑うと、分厚いカラオケ本を私の膝に置いた。

ドシッとした重みで浮かしていた踵(カカト)が床に落ちる。

『……』

何を歌えばいいんだろう。
何を歌ったらハズさないんだろう。

「俺、このアーティスト好きなんだよね! 角崎さん知ってる曲ある?」

考え込んでいた私に隣の伊藤くんが、そう声を掛ける。

伊藤くんが指差していたのは「歌姫」と呼ばれる人気アーティスト。

でも…1、2曲しかわかんないな…

「角崎さん似てるって言われない? 前から俺、思ってて。」
『そ、そうかな…』
「似てるって! 俺、曲入れっからプロモ見てみなよ!」

そう言って手慣れたようにリモコンで曲を入れる。
そのすぐ後に聞いた事のある曲が流れた。

『…ッ』

真っ直ぐすぎるLoveSong…

「大好き」「愛してる」
私の言えなかった言葉がいくつも並ぶ。

「傍にいる」
私は確かにそう言ったけど、「好き」は言ってない。

「ね、どうだった? 自分に似てると思ったっしょ!」
『……うん…』

【飽きちゃった】

あの時【好き】と一言言えたら、何か変わっていただろうか…

『…私… 帰るね。』

どうしよう。
ものすごく恭平に会いたい。

嫌われてても、恭平と話したい。

「ちょ…ッ 待てよ!!」

部屋の外に飛び出した私を伊藤くんが追い掛けてくる。

「ッんだよ! 何でいつも…」

そして腕を掴み…
声を張り上げる。

「何で逃げんだよ!!」
『…ッ』

ねぇ、恭平…
私、納得できる答えが欲しいよ…
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