HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■誰?

【好きだよ…ッ】

私の口から飛び出した言葉に恭平は静かに振り返る。

その表情は真っ直ぐで、何の迷いも感じられない顔…

『ただ珍しいからだよ。 好きなわけじゃない。』

真っ向からの否定。

恋か錯覚か…
言い切られると迷う。

『…HEAVENは楽しかった?』

小さく笑ってみせる恭平の口から、そんな質問が飛び出す。

嬉しかった。
恭平と愛里に会えて…

楽しかった。
笑顔で笑い合う日々が…

幸せだった。
恭平と付き合えて…

『楽しいからって、それが恋愛とは限らないんだよ。』

違う。
楽しい、嬉しいで好きになったんじゃない。

これは錯覚なんかじゃない。

『…恭平はッ… 私の言う事、嘘だと思ってたの?!』

恭平から見たらくだらない子供の戯言(タワゴト)に過ぎないかも知れない。

でも、私は本気なんだよ?

『逆に聞くけど… 俺の言う事、真実だと思ってた?』
『…え…?』

頭の中に突然、1つの言葉が浮かぶ。

【幸せだよ】

つい数日前、恭平が口にした言葉。

『愛里も言ってたでしょ。 俺は「気まぐれ」だって…』

何まで嘘で何から真実か…
何処まで現実で何処から夢か…

もう解らない。
目の前にいるこの人さえ、誰なのか解らなくなりそうだ。

『忙しいから… 俺、行くね?』

茫然と立ち尽くす私に背を向け、去っていく男性…

……貴方は誰ですか?
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