HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■天国を求めて
○Side MARIA
HEAVEN…
それは天国…
性別も年齢も…
人格さえ関係のない世界。
「んぁッ マリア…ッ」
「愛してるわ… マリア…」
守るべきルールもない。
深夜1時…
シンと静まりかえった店内で恭平は1人、グラスにワインを注ぐ。
「マリア、女の子帰ったの?」
そこに見計らっていたかのようなタイミングで愛里が声を掛けた。
『趣味悪いね… ずっと伺ってたの?』
「まさか。 逆に声がしたから外に出てあげたのよ?」
『…それはどーも。』
恭平はフッと笑うと、もう1つグラスを取り出し愛里に差し出した。
「ねぇマリア… 何でカンナには恭平って呼ばすのよ。」
『…さぁ…?』
「紗羅に似てるから?」
差し出したグラスの向こう…
愛里が悲しげに笑うのが見えた。
『愛里… 紗羅の事は関係ない…』
「…ごめんなさい…」
誰を抱いたって、誰が笑ったって…
紗羅の代わりになんてなれないよ。
今はただ、紗羅の事ばかり想わないよう…
ごまかしが欲しいだけ…
「マリアー、いい女いねぇ? 彼女と別れちゃってさぁ。」
HEAVENには色々な人が来る。
彼も常連客の1人…
哲也というのが名前らしい。
『いるじゃん、愛里とか。』
「男じゃん! つかマリア、厄介払いしたいだけだろ!」
『まさか。 愛里を厄介だなんて思ってないよ?』
何か食べて適当に飲んで…
そして世間話…
HEAVENに「これだ」という売りは無いけれど、皆がまた来てくれる。
きっと皆…
「天国」という場所を求めてる…
俺が紗羅亡き今もココにいるように…