HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■恭平の居場所

pm6:30

『こんばんわー。』

私はHEAVENの扉を開けた。

お酒の香りだろうか。
甘すぎる匂いに頭がクラクラする。

『無事に退院できました。』

私はカウンターの向こうに立つ愛里に笑顔を見せる。
すると今にも泣き出しそうな顔でコクコクと頷いてくれた。

親友…
ようやく自分の存在の重さを知った。

「本当に心配したのよ? 無事で良かった…」
『うん… ごめんなさい…』

【もう会わない】

もうすぐそれが最期の会話になってしまう所だった。

『あの… 恭平は?』

私はお店の中に恭平の姿が無い事に気付き、そう問い掛ける。

すると愛里は静かに首を振った。

「相変わらず… 来ないのよ、お店に…」
『来…ない?』

一体どうしたというのだろう。
ここは…HEAVENは恭平の大切な場所なのに…

「カンナが退院した事、教えてあげたくても会えないんだもの。」

恭平がここを捨てるなんて有り得ない。
あるわけない。

『…私… 恭平、探してこようか…?』

きっと何かわけがあるんだ。

「大丈夫なの?」
『うん… そんなに酷い怪我じゃないし…』

それに恭平には聞きたい事が沢山ある。
もう一度会わなきゃいけないんだ…
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