HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■愛情<殺意
洗わなかったネックレス。
後を追わなかった恭平。
まだ大きな仕事が残っていた。
『あのネックレス… どうして俺が持ってると思う?』
恭平はそう言って、私の髪に触れる。
まるで髪にも神経が通っているかのように緊張が走った。
『あいつを監獄なんて安全地帯に行かせないため。』
あれは…
あのネックレスは犯人を見つける有力な手がかかりになる。
そのネックレスを恭平はあえて隠した。
誰に拾われる事もない、自分の部屋に…
『結局さ。 遺族がどんだけ悲しんだって泣いたって、人1人殺したくらいじゃ重い罰は与えられない。』
確かにテレビで見た事がある。
2人以上の殺人でないと死刑にならないって…
『何年か刑務所入ったって、更生するわけないし。』
『そんな…ッ』
『だって悪気ないんじゃん? 無差別に「誰か」を殺したかっただけで。 ただ紗羅が目の前にいただけだから…』
恭平はそう言うと小さく苦笑する。
ゾッと鳥肌が立った。
これほどの殺意を抱いていた事、今まで気付かなかった。
静かで…冷たい殺意…
いつ狂気を放つか解りづらくて…
それがまた恐い。
『カンナとやり直すのもいいかなと思ったよ、正直…』
一変、穏やかな表情で恭平は言った。
『でも駄目。 あの晩テレビであいつが近くにいるの知ったら、抑えられなくなったんだ…』
【幸せだよ】
恭平はあの晩、私と歩む事を考えていてくれた。
でも…
【犯人は近くにいる】
私への愛情は殺意に負けてしまったようだ。
『だからごめんね? 俺はカンナを犯罪者の恋人にしたくない…』
恭平はそれだけ言うと背中を向け、去っていく。
【好きだよ】
初めて聞いた恭平の気持ち。
こんな形で聞きたくなかった。
『…恭へ…ッ 好きなら…好きなら行かないでよ…!!』
声が掠れる程、叫んだ願いは恭平に届く事なく風にのまれた…
洗わなかったネックレス。
後を追わなかった恭平。
まだ大きな仕事が残っていた。
『あのネックレス… どうして俺が持ってると思う?』
恭平はそう言って、私の髪に触れる。
まるで髪にも神経が通っているかのように緊張が走った。
『あいつを監獄なんて安全地帯に行かせないため。』
あれは…
あのネックレスは犯人を見つける有力な手がかかりになる。
そのネックレスを恭平はあえて隠した。
誰に拾われる事もない、自分の部屋に…
『結局さ。 遺族がどんだけ悲しんだって泣いたって、人1人殺したくらいじゃ重い罰は与えられない。』
確かにテレビで見た事がある。
2人以上の殺人でないと死刑にならないって…
『何年か刑務所入ったって、更生するわけないし。』
『そんな…ッ』
『だって悪気ないんじゃん? 無差別に「誰か」を殺したかっただけで。 ただ紗羅が目の前にいただけだから…』
恭平はそう言うと小さく苦笑する。
ゾッと鳥肌が立った。
これほどの殺意を抱いていた事、今まで気付かなかった。
静かで…冷たい殺意…
いつ狂気を放つか解りづらくて…
それがまた恐い。
『カンナとやり直すのもいいかなと思ったよ、正直…』
一変、穏やかな表情で恭平は言った。
『でも駄目。 あの晩テレビであいつが近くにいるの知ったら、抑えられなくなったんだ…』
【幸せだよ】
恭平はあの晩、私と歩む事を考えていてくれた。
でも…
【犯人は近くにいる】
私への愛情は殺意に負けてしまったようだ。
『だからごめんね? 俺はカンナを犯罪者の恋人にしたくない…』
恭平はそれだけ言うと背中を向け、去っていく。
【好きだよ】
初めて聞いた恭平の気持ち。
こんな形で聞きたくなかった。
『…恭へ…ッ 好きなら…好きなら行かないでよ…!!』
声が掠れる程、叫んだ願いは恭平に届く事なく風にのまれた…