HEAVEN -天国の階段- (全106話)
■声

ねぇ…
恭平は今、何してる?

私は…

『こんにちわ、愛里。』

相変わらず、HEAVENで貴方を待っているよ。

【犯罪者の恋人にしたくない】

恭平はそう言って私の前から去っていった。

でも私は…恭平を諦めきれない。

例え、殺人鬼でもそうでなくても。
私の気持ちは変わらないの。

「ごめんねカンナ。 マリア、今日もいないのよ。」
『そっかぁ、じゃあまた捜してみる!』

あの日から恭平が犯人を捜すように私も恭平を捜してる。

次に会えたら、きちんと自分の気持ちを伝えるんだ。




《ぴんぽーん》

恭平のマンションのインターホンを何度も鳴らす。
しかし部屋の中からは物音1つしなかった。

…仕方ない。
少し待たせてもらおう。

扉の前の砂を払い、そこに腰を下ろす。
お尻にひんやりと地面の冷たさが伝わった。

目を閉じると浮かぶのは、恭平の笑顔。
今となっては、あの無邪気な笑顔が嘘のよう。


ずっと目を閉じているとお尻から伝わる冷たさは消え、まるでフワフワのスポンジに座っているような感覚に陥った。

《…平…恭平…》

それと同時に遠くの方から聞こえるか細い声。

体が…動かない。

《私の事…忘れていいんだよ?》

この声、この言葉…
前に夢で聞いた事がある。

この声は……





『…羅…紗羅ッ!!』

突然の大声に私の心臓が痛いほどに脈打つ。

開いた瞳には恭平の姿が映った。

『恭平…?』

それと同時に涙が滝のように溢れてくる。
もう自分では抑えられない。

『恭平… 紗羅さんと…喋った…』

夢の中のあの声は…
間違いなく「彼女」だった…

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