小悪魔カレシ。
「このヘタレ!あたし、弱虫は嫌いなんだから!泣いてばっかないでさっさと帰るよっ!ママが心配するでしょ!?」
放課後、校庭で遊んでたあたしがランドセルを取りに戻ったら、この有様。
他のみんなは帰ってしまったけれど、あたしは放っておけなかった。
泣き虫奏汰はあたしが連れて帰ってやらなきゃずっとメソメソするに決まってる。
いつもそう。
泣いてる奏汰のお尻を叩くのはこのあたし。
代わりにいじめっ子をぶっ飛ばしてやったこともある。
奏汰の手を掴んで、無理矢理引っ張って立ち上がらせると、
「ぼ……僕、ヘタレじゃないもん!凜ちゃんの意地悪ぅ〜!」
涙をこぼしながらもあたしの手をぎゅーっと強く握ってくる。
あたしよりチビな奏汰の手は、やっぱりあたしのより小さかった。
──守ってあげなきゃ。
奏汰のために、強くならなきゃ。
その手を握り返しながら、子供心に強くそう思ったのを覚えてる。
男まさりなあたしと、
泣き虫なあいつ。
あたしが守って、
あいつが守られて。
そんな関係は一生変わることはないと思ってた。
小学3年生の2学期にあいつが引っ越してしまうまで、ずっと。