ヘタレ★ヒーロー
玄関の前には黒いスーツを身に纏った三十代前半と思われるお兄さんが立っていた。
「夜分遅く申し訳ございません。橘様のお宅ですか」
「はぁそうですが…」
「わたくし蓮見グループの土方と申します。先日、わたくしどもの坊ちゃまが橘様にご迷惑をおかけした耳にしまして…」
土方さんは面目なさそうに言った。
わたくしどもの坊ちゃまが迷惑かけた…?
蓮見グループ…。
まさか…!
「気づくの遅ぇよ馬鹿」
「蓮見くん!」
土方さんの後ろから蓮見くんが現れた。
「坊ちゃま!」
「土方、もう帰っていいぞ」
「帰っていいって坊ちゃま。今日は会長の命で坊ちゃまの橘様への無礼の謝罪に…」
「だからもういい」
ていうか蓮見くん坊ちゃんなんだ。
蓮見くんが坊ちゃまって…(笑)。
「今笑ったか」
「滅相もございません坊ちゃま」
「てめぇもう一回言ってみろ」
「なにか坊ちゃま」
坊ちゃまは禁句なんだな。
「凜子、客かぁ?」
アニキが来た。
「ってまたお前かぁーーーっ」
「だからコイツになんか手ぇ出さないっすから」
「信じらんねぇ」
あぁあ。
「俺は帰る!」
蓮見くんは帰ってしまった。
「坊ちゃまっ!…まったく」
土方さんもため息をついている。
「…橘様にお話があるのですが」
「ぇ?あ…はい」