大きなクリスマスツリーの下で
エミリーのことは好きだった。

好きな相手と結婚できれば、それがいちばんの幸せである。
だが、結婚とはそんな簡単なものではない。

結婚するということは、自分の人生の他に、結婚する相手の人生も考えなければならない。

自分自身が、エミリーの父親の事業を継ぐことなど、そんな大それたことなど出来る自信がなかった。
それは、エミリーの夫には、ふさわしくないことを意味している。

そんな誠司の心の中を、エミリーの父親は見抜いていた。

誠司は、エミリーと別れることを決めた。
それが、彼女の将来のためを思ってのことだった。

しかし、なかなかエミリーに別れを切り出せなかった。

嫌気がさして別れるのではない。

二人がとりまく環境の違いから別れることが、自分自身にやりきれなく酷なことだと思って仕方なかった。

そう思いながらも誠司は、クリスマスの夜に別れを告げる。






< 29 / 95 >

この作品をシェア

pagetop