大きなクリスマスツリーの下で
その日。
二人は、オルペラ街にあるメキシコ料理店で夕食をした。

そのメキシコ料理店は、誠司とエミリーが、初めて二人だけで食事をした思い出の店だった。

薄暗い店の雰囲気の中、天井から照明の光が照らしているテーブルに、二人は差し向かえに座った。

食事中のエミリーは、二人だけで過ごすクリスマスを楽しんで嬉しい表情をする。

そのことが、誠司には心苦しい。

これから別れを告げなければいけない。
二人にとって会うのが最後の日になる。

そう思うと、エミリーと過ごす時間を、もっと楽しいものにしたいと思っていたが、いざ本人を目の前にすると、そんな気持ちにはなれなかった。

誠司は、エミリーの前でわざと笑顔を見せたが、どこか硬い表情だった。

エミリーは、そんな誠司のことが、いつもとは様子が違うことを感じとった。





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