大きなクリスマスツリーの下で
トムが、誠司の様子を伺うためベランダにやって来た。

ジェーンがトムに近寄り、ささやくように兄弟ケンカの経緯を説明する。
すると、トムはハツとした表情になった。自分のひと言が、思わぬことになってしまったことに気づいた。

「ジェーン・・・・・・すまないが、俺は帰るよ。迷惑かけるけど、兄さんのことは頼む」

涼は、ジェーンの家に泊まることになっている。
ジェーンは、誠司にも泊まることを勧めた。
兄弟水入らずで、過したらいいと思っての気遣いだった。

誠司は、涼とのケンカの後で、そんな気持ちになれなかった。
ジェーンに悪い気もしたが断った。

「ソレハイイケド・・・・・・デモ、本当ニイイノ? モウ一度、オ兄サント話シ合イシナクテ? 」
ジェーンは念を押すように聞いた。

「兄さんには、俺の気持ちはわからないさ」
誠司はボソリと言って、リビングに入った。




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