恋雨‐koiame‐
あたしが立ち上がったのに、紀田はずっと座ったまま。
「ねぇ、行かな」
「分かってたんだよ」
あたしの声に重ねながら話し出した。
「分かってたんだ。
志那ちゃんがアイツの事、まだ好きなのも。
…アイツが志那ちゃん好きになりかけてることも」
「……」
ストンと腰を下ろした。
あたしは何も言わない。
「振られる、って分かってた。
でも、いざとなったらやっぱりツラかった」
「………」
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