犬に恋した。
そんな中でも俺は、全く彼女を意識などしなかった。
「お前さぁ、なんで諒子ちゃんと喋ってるとき、あんま嬉しそうじゃないわけ?」
「なんでって、誰だって同じように話してるだけなんだけど」
俺がそう言うと、親友の優斗は、はぁとため息をついた。
「あのさ、あんなかわいい子を見ても、興奮とかしないわけ?」
興奮……?
聞いてすぐに、意味がわからず心の中で呟いた。
「するわけないだろ」
すると今度はさっきよりも大きなため息をついた。
「俺はお前が恨めしいよ。
何の気ももたない奴の隣になっちゃうなんて、諒子ちゃんもつくづくかわいそうだな」
そんなこと言われても。
そういいかけて、俺は口をつぐんだ。
そんなとき。
「何話してるの?」
例の彼女が話しかけてきた。
「おっ、噂をすればってやつですか?
今、諒子ちゃんの話してたとこ!」
「えっ、なんの……?」
そう聞く彼女の声は、さっきの声よりも1トーン下がったような気がした。