犬に恋した。
優斗がいなくなったこの場で、どうしたらいいのか俺はわからなかった。
「なんか…ごめんなさい…」
唐突に、彼女は言った。
「でも私、あなたのこと、好きです」
「……」
そんなこと、こんなときに言われたって…。
ここでOKの返事をしたら、絶対に優斗とはもう元には戻れない。
「ごめん」
そう答えることしか、俺には出来なかった。
「いいの、私が悪いんだから」
そう言った彼女の表情は、やっぱり悲しげで、それが本心ではないことがすぐにわかった。
つくづく不幸な男、それが俺だった。
それから彼女は足早にそこを離れていった。
そんな中、俺は一人取り残され、ただ呆然としているだけだった。