夢幻の姫君
健人はそんなのも分からないのか? というような目で、馬鹿にしたような顔をしながら答える。

「春姫様がいなくなったその日から、この国の花は咲いても長く持たず、桜にいたっては咲かなくなった。それがすべてだ」
「ケイ!! それは花姫様や陛下達が…………」

口を挟んだ彼に健人は目線を向ける。ビクッとなった彼を見て、主従関係じゃないのキミタチとすっごく疑問に思った。

「花姫様達がいてもかわらないのだろう? 国民達は、花姫様の由来は春姫の喜びから出来たといわれている」

何も言えないらしい彼らはそれっきり黙ったしまった。
 話が終わったらしいので、話しかける。

「健人……… 詳しく説明して………?」

それに気づいた健人はいつもの表情に戻って、そうですねと答えた。

「フォル殿下。“あの部屋”使わせていただきます。 言わなければならない事がたくさんあるので」

その彼は頷いただけだった。

悲しげに私を見ながら。
 気になった私は問う

「どうしてそんな悲しい顔で私を見るの?」

そう言った私に微笑みながら言う。“答えにならない答え”を

「許して欲しいとは言わない。いや、言えない。だけどもう一度あの笑顔で笑って欲しいんだ。俺は」
「意味わかんない」

そう言った私を笑いながら見ていた。私が健人に手を引かれるまで。

「どうか思い出して、俺の、いや皆の大切な春姫様。夢を与えて幻のように消えるのではなく、どうかずっとココに夢と幸せを―――――」

彼が私にそういったのが見えた。
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