夢幻の姫君
訝しげな視線を健人に向ける、私と5人の男

その視線に戸惑ってるらしい健人。

「え、え~とですね…………」
「早く」

戸惑っている健人をおいて、先を促す。

「ここは、【ヴェリノウス】。 ……………クーの故郷だ」
「は?」
「「「「ここが?!」」」」
「故郷?」

それぞれの意見の違いに驚く。私のことなのに、私が一番知らない………?

「何でみんな知ってるの? 私のことなんでしょう? 春姫って」
「落ち着け、クー。 ………ちゃんと説明する」

ゆっくり、深呼吸した。頭痛がする。

 思い出したく、ないかのように―――――――

「みんなが知っているのは、お前が話したから。俺がここがそこだとわかるのは………俺はここの住人だから」

私が話した? そんなの覚えていない……
 えっ? でもそれじゃあ健人は――――――

「俺は、あの世界の住人ではない。本来の名はケント・ケイ・ヴァルフィン。クーと同じ、健人は自由に動くための偽名だ」

偽名? ケイ・ヴァルフィン……

 ズキッ

知ってる気がするし、知らない気がする。頭が痛い。私は知らない事がまだあるの?
 どうして私は――――――

「父さんがここの住人? 故郷って事はクーもか? じゃあ俺は?」

いつも冷静沈着な真琴が、声を揺らして訊いた。
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