夢幻の姫君
10年前、春の国城下町にて。

この国は、おおらかな人が多く、商業が盛んだった。

 多くの声が飛び交い。ある人は買い物へ、ある人はお花見へと楽しく生活していた。

 「あ、春姫様!!」

いつもその国民の近くにいて、意見を取り入れてきたのはこの国の第一王女にして国民からの信頼と支持を持った、春姫。

名を、クラン と言った。

王家の者を名前でなんて呼べない国民は、通称で呼ぶ。 通称は生まれたときに決められる。

 春姫の由来は、ココに“来た”とき、出会った人に笑顔を。膨大な魔力で今の住みやすい春をよんだ事から、そう呼ばれている。

大きくなった今でも、国民を大事にしてきた。

国民もそんな春姫が、次期女王になって欲しいと思っていた。

そんな、ある日。異変が起きる。 その日の昼頃、急に草花が枯れたのだ。 前触れも無く。
 次の日には新しいものが咲いていたが、あるものだけが咲かなかった。

春の象徴的な花。桜。

 それだけ、そこだけ冬が来たかのように、裸になっていた。

春姫が一番大切に、大切にしていた一本の大きな桜には、大きな亀裂がはいっていた。
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