夢幻の姫君
 国民には理由がわからない。

――なぜ、桜が咲かないのか。

――なぜ、あの木だけ亀裂がはいっているのか。

不吉な思いを抱えていた。

 いつも、来訪してくる時間になっても春姫は、城下町に来なかった。

2日、1週間、1ヶ月。

不安は確信となりかけていた。
 信じたくない国民は代表を出し、謁見を望んだ。

 しかし、姫はいなかった。
城にも、国にも。

――侍女が追い出した――

そんな噂も流れ、黙認していた王家にも火の粉がかかった。


年々魔力が衰えてきた王家は、国民が束になられたら崩れてしまうほどのものだった。
 それをしなかったのは、守るべきお方がそこにいたから。
でも、今はいない。しかも追い出したのは王家。国民の怒りは頂点に達する。

A traitor ・・・反逆者となる。
 
 王家に刃を向けた初めての出来事。
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