夢幻の姫君
「これが、ハルの出生の秘密だ」

 言葉が出なかった。私は“また”誘拐されていた。親から引き離されていた。

私の親は何人いるの? でも“ルイ”って・・・・・・

「その人達は、今どこに?」

会いたくなって、訊く。

「知らん。だが確かあの男の名は・・・」

耳鳴りがする。聞いてはいけないように。もしくは気づきたくないと逃げるように。

「ソウ・・・・・・“奏聖”と言ったか?」

ドクンッ

心臓の音が聞こえる。気のせいかもしれない。

「み、名字は?」
「確か、桐生だ」

確定してしまった。父母は知っていた。私が普通の子ではない事を。
 母さんは涙(ルイ)。もう間違いないだろう。

心臓の音がうるさい、聞きたくないようにと訴えているようだ。

 そんな私の様子に気づかず王は続ける。

この国に来てからの私を。
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