夢幻の姫君
帰り道、あんなにはしゃいでいたののも黙っている。

「ねえ」
「ねえ」

声が被ってしまった

「ののからでいいよ」

そしてののが口を開く

「あの人たち、美羅をみて驚いてたね。 そんなに似ていたのかな?」

そう言われると、彼らは私を見ると目を見開いて 驚きを隠せないでいた。

「あんなイケメンに思われるなんて、幸せだよね!!」

言うべきだろうか、声が聞こえた事を…
でも聞こえていたのかもしれない

「気苦労が絶えなさそうだけどね。 ところであの時声を聞かなかった?」
 聞いてみた。

「へっ? 声なんて聞こえなかったよ?」

聞こえていなかった… あれは私の前世の声? あの人たちはそのときの? 夢の?
 いや違う気がする、何か分からないけど 
あの人たちがやさしい草食動物だとしたら、あの男は―――――

「声がどうしたの? 何か聞こえたの?」

なかなかしゃべらない私を変に思ったのか、声をかけてきた

「いや、空耳だったみたい。」

結局言えなかった 言わせなかったのかもしれない

―――――もう一人の私が

もやもやしたまま、ののと別れた。
< 14 / 210 >

この作品をシェア

pagetop