夢幻の姫君
誘拐されたクーは王のもとに届けられた。

 王が触れた瞬間、黒髪は灰色になった。クーはルイによって、魔力を封じられていたのだった。

 子が長い間できなかった王と后の子として発表された。
その時国民に向かって、微笑んだときに花が満開になった事から“春を呼ぶ姫”。“春姫”と呼ばれるようになった。

 春姫はすくすくと成長した。もう膨大な魔力を制御できるまでになっていたのだ。

そんなある日、“ある異世界”より急襲をうけ、崩壊した秋の国に視察に春姫も行く事になった。


 そこは、瓦礫の山で建物は1つもなかった。あるとすれば、新しく生えた草木だけだった。
 その戦で王は死んだらしい。王の後妻は連れ子の第二王子を連れて脱出し、今は国で保護を受けている。 しかし直系の第一王子は見つかっていない。
 この子は第二王子より2つ下だったが、どうしてこの国に残ったのかは誰も見当がつかなかった。

 春姫は急に使節団から離れて、誘い込まれるようにフラフラとしていた。
お付が追いかけたら、ある空間の中に“消えた”。

知らせて、場所がわからなくなって慌てているうちに春姫が帰ってきた。
 男の子を連れて。

それが今、共いるフォル。正式にはアキ王子。第一王子であり。秋の国王位継承権第一位の王子である。

 このときのアキは、呪いで言葉を話せなかったため、春姫が勝手に“レン”と付けて呼んでいた。 現在までずっとそう呼び続けてきている。アキがそれをクーに呼ばせるのは、思い出させたかったのかもしれない。 出会いを。

 そしてふたりは一緒に成長していく。 仲良く、仲良く育ってきた。
ずっと一緒にいると思っていた。



 ―――あの事件が起きるまでは――― 



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