夢幻の姫君
ドクンッ ドクンッ

心臓の音がうるさい。 息が乱れる。 頭が痛い。 すべてを、すべてを拒否するかのように体が異変を起こす。


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

私の視界は真っ黒に染まった。

ジジッ

何かが見える。

『俺を利用してたんだな!!俺を騙してたんだな!!俺の国を手に入れるために』

あのときの映像だ。喫茶店で見た。

『してないわ!! どうしてそんな事言うの? 私たち恋人同士じゃない! 信じて!!』

わ、私? ドキドキする。もうこの答えを知っている。 止めて、ヤメテ、ヤメテヤメテヤメテーーーー

『お前の事なんて、信じられない!! もう俺の前から消えてくれ。俺の前に二度と姿を現すな。』

ハッ、ハッ、ハッ・・・・・ 息が出来ない。クルシイ。 そうだ、クルシイのから逃れるために
 私は――――――

『そんな・・・・・・ じゃあ最後のお願い聞いて。あなたはこれから言う事をやってくれる?』
『何を?』
『これに契約の証を入れて、私と契約をして』
『どういう意味だ?』
『そうすれば、貴方は私と会う事はない・・・二度と。契約を破棄しない限りは』

了承しないで―――
 その願いは届かない

『わかった』
『契約を破棄しても10年は私を見つけることは出来ない。それでも?』
『どうせ会わない』
『・・・そう、じゃぁ元気でね。もう後悔しないように。・・・幸せに。バイバイ』


そう言って私は姿を消した。彼の前から。この国から。



 それが彼との最後の言葉。 もう会えないと思っていた彼との最後の会話だった。



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