夢幻の姫君
プスッ

変な音が聞こえたと思ったら、首筋がチクッとした。

「な、なに?」

隼人は答えない。待っていたら体がなんだかゾワッとした。
 体が変。 体の奥から何かが這い上がってくるみたいだった。

「あっ・・・あぁっ」

変な気分になってきた。 なに、これ。 力が・・・

「何やってるんだ!!」

私の声に気づいたアキが声をかける。 私の力が入ってない様子を見てか、隼人が顔を上げた。

 彼の瞳は普段の茶色ではなく煌々と光っていて、赤色になっていた。

そして口には、鋭い牙が生えていた。

えっ? キバ・・・?

「お、お前、ヴァンパイア、か?」

ヴァンパイア? 吸血鬼? もう何がなんだか・・・

「ごめん、血吸いすぎた。クーは俺のトクベツだから」
「トクベツ・・・?」

貧血からなのか、頭がうまく回らない。

「俺だって、負けるわけにはいかないんだ」
「誰に?」

前に誰かに、そんな事言われた気がする・・・。

「いろいろ。 キスは取られたからアトつけた」
「アト・・?」

そこを見ると、そこには――――
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