夢幻の姫君
「え、み、美羅・・・?」

ののが動揺した様にそう言った。
 声が揺れている。

私は何も言えずに揺れた瞳でののを見る事しか出来なかった。

「おや。知らなかったのか? “親友”なのに?」

翔がニヤニヤと笑いながら言う。
 もちろん目は笑っていない。

「コイツは、死んだ親友の代わりに生きているんだ。これを庇ったばかりに死んだやつのな」

 ヤメテ、ヤメテ、やめてよぉぉぉぉぉぉぉ

「コイツはもう人間なんかじゃない」

イワナイデ、モウクルシメナイデ

私から大切なものを、奪わないでぇぇぇぇぇ

「コイツは化け物だ。それでも“親友”か?」

あ、あ、あぁ。

 どうして? どうして? 私は自由に、幸せになっちゃいけないの?

どうして運命は、私から大事なものを奪おうとするのですか?

ののは、口を押さえて震えている。 
 それはそうだろう、目の前の恐怖と“親友”の秘密を知ったのだから。

私は、一人。 昔から。 分かって貰おうなんて思わない。
 ただ、友達が欲しかった。“同情”でなんかじゃなく、部下でもなく、わかってくれる人が。

「どうして?」

私の言葉で、アイツの部下が吹っ飛んだ。

 もう、抑えなんてイラナイ。 大切なものはなくなってしまったのと同然だから。

私は貴方を


       絶対に許さない。





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