夢幻の姫君
「あ。」

唐突に思い出す。
 訊くんだったそういえば。

「「何?」」

二人は同時にそう言った。

「おぉ。重なった! 綺麗じゃん。もう一か…」
「はよ言え」

隼人は冷たい。
 だって綺麗だし~ 私はなかなかそういうの無いし~

そう思って口を尖らせていると、隼人が残念な人を見るような目をして言う。

「さっきの事忘れてるだろ」
「何が?」

呆れたようにそう言われて、反射的に言い返す。
 さっき? 確か考えろって・・・

そう思案していると、もういい……と疲れた様子で言った。
 
「特別重要じゃないと、忘れちゃって。すぐ思い出すよ!!」

そう言ったのに、あいつは遠い目をしていた。どして?

「で、どうしたの?」

ののが隼人をかわいそうな目で見つめた後、苦笑しながらののは言った。

「名前。あと……なんだっけ?」

そう言ったら、呆れた顔で見られた。
 なんだっけって知るかよ……って隼人がぼやいたけど、そんなのは知ったこっちゃありません。

 分からないのは、分からないですから
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