夢幻の姫君
ふ、普通って、お前はどっかの金持ちかっつーの!!
↑注:社長で金持ちです。

「護衛もかねているので、防弾であるこの車の方が安全なんです」

眉間に皺が寄っていた私にそう怜斗が言った。

「私、命狙われてな―――」

「新名のこと、忘れたわけではないでしょう」

ビクッ と体が反応してしまった。

何で、どうして、言ってないのに。
 それしか頭に無くて、どうしていいか分からなかった。

「健人さんから、ききました。〝プロジェクト〟の事」

そう言われた時頭の中が真っ白になった。
 彼等は離れてしまうのだろうか? 私が化け物だから。そしてあの目で遠くから見るのだろうか。恐れたような目で―――

「離れませんよ、第一、最初に離れたのは貴女ですよ。私達の事を考えて、私達の事を考えずに」

 意味が、わからない。
考えて、考えてない? 

「私達の将来のことを考えて、私達の気持ちを考えてない。そういうことです。それに恐れるなんて事はありえません。忘れましたか? 私たちは――」

そこで体を屈めて耳に近づけて言う

「吸血鬼、ですよ―――?」

耳に息を吹きかけられてビクッとなった私を見て満足そうに笑っている。
 もちろんその口からは見える。牙が。

赤くなった私を見て不機嫌そうな隼人。
 逃げたくなった私は二人をつかんで車の中に逃げた。

周りが見ていたことも忘れて。

そして車は校門から離れていく。
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