夢幻の姫君
会社に向かう車の中で

「美羅、大胆ですね? 男二人の〝手を握って〟車に乗るなんて」

明日が見物ですね? とニヤニヤしながらそう言っていた。
――――怜斗が。

うん。そうなんだ。君もそうなんだね。やっぱり腹黒い奴に育てられるとそうなるんだね。勉強になりました。

「で、手離してくれないの? ちょっと……」

そう言っても、怜斗は、ん?と微笑んだまま首をかしげ、隼人は外を見ていた。

「聞けよ!! 主の言う事は!!」

怒ってそう言うと、

「出てったクセによく言いますね。命令は、時と場合によって聞く事は出来ませんので」

笑顔で言われた。クソッ ムカツク。すっげーむかつく。
 真琴に。

「何で!?」

どうやら口に出ていたらしい。隼人がそう突っ込んできた。

「だって真琴の下じゃなかったら、怜斗は紳士なカッコイイ男の人になっていた筈なのに、隼人は不器用でも意地悪でも腹黒くならなかった筈なのに~~!!」

車の中でそう叫んでしまった。

二人は顔を見合わせ、苦笑いしながら二人で静かに会話をする。

「俺、昔からこんなんだと思うけど。腹黒いのはコイツもだし」

「まぁ、そこは黙っとけ。イメージは崩してはいけないよ。……真琴には悪いが」

「俺の内容は褒められているのか、貶されているのかわからんぞ」

「落ち着け。そこは………良い様に考えるのが一番だ」

「おい。」

私が訝しげに見ている事に気づいた二人がそこで会話をやめた時、丁度会社についた。


< 174 / 210 >

この作品をシェア

pagetop