夢幻の姫君
「響に連絡をしてきますが、和哉さんはどうして倒れられているのですか?」

お父さんが和哉を〝さん〟付け!? 
 っていうかなんで和哉は倒れてるの? 最初はいじけていただけなのに。

みんな知らなかったみたいで、(私にいたっては存在を忘れていた。)ポカンとしている。だけど、健人だけはニヤニヤしていた。(健人の紳士は猫かぶりだといまさらながらわかった) 
 
 もう一年分ぐらい笑っていると思う。意地悪い笑みだけで。

「健人……。そんなに笑って理由知っているの?」

そう訊くとポカンとした顔をされた。

「理由、ね。……あえて言うなら〝あなた〟ですよ。……言ったのは私ですが」

「私!?」

和哉を起こすために揺すっている隼人から溜息が聞こえた。
 溜息ってなんでよ。不憫な奴ってどういう事!!私何もやってないよ!!

ガバッと跳ね起きた和哉と驚いて目が合うと、和哉は目に涙を浮かべ始めた。

はい? いや、何で泣きそう? 16の男が涙は、さすがに止めたほうがいいよ。キモイから。ホントに。ごめん。かわいい顔してもそこは許せないな私。

 いやそうな顔が出ていたのかさらに涙を浮かべ始めた。さすがにうっとうしくなってきたので、

「簡単に泣く男は嫌いだ。好かれないぞ。体だけなんて寂しいだけだ」

和哉はそれで涙は引っ込んだみたいだったが、優に訝しそうに見られた。
 何よ。

「何か、……経験した人みたいに聴こえるんだけど」

え? 何ソレと思って、見つめ返す。
 
「言っている事は正しいと思いますけど……。シた事あります?」

そしたら怜斗がそんな事を言ってきた。シたって? どういう事?
 そんな顔が出ていたのか健人が

「セック「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

言いたい事が途中でわかったので大きな声を出して遮ってしまった。道理で隼人の頬が少し赤いのか!! このエセ紳士め!! 何を言うか!!

セックスした事があるかないかなんて、訊くなよーーーーーーーーーー!!

 
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