夢幻の姫君
数秒後、ドタドタと足音が周りに響いた。そして近くにいた隼人が扉を開けると滑り込むように人が入ってきた。
 その人は正座するとそのまま

「申し訳ありませんでしたーーー!!」

と、叫んだ。そして土下座した。
 
 声があまりに煩かったので、みんな顔をしかめていて何も言わずにいると。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、もうホントにしないから、許してください、もうほんとに、グスッ うぅぅう」

懇願するように謝ってきた。最後の方は涙声になってたけど大丈夫?
 この状態を続けるわけにはいかないので

「と、とりあえず、顔を上げてください」

そうするとお父さんの方をチラッと見た。何を確認したのか顔を上げた。
 ………涙で大変な事になっていたけど。
40近くのおっさんが。

「ん? 奏聖にちょっと似てる……まさか!!」

お? 気づいた?

「お、お前かぁぁぁぁ奏聖をたぶらかした女わぁぁぁぁぁ」

「はぁ?!」

何言ってんのコイツっと思った瞬間スパーーンといい音が鳴った。

「涙だったら俺に似てねぇよ。そして俺はたぶらかされてねぇ!!」

うわぁ……最後は声を荒げたけど、いやぁ、最初の方笑顔で言うところじゃないからね。

「そ、そうでした……。お義姉様は優しくて可愛らしい方です…」

「うん、そうだよ」

そう言わせたお父さんは満足そうに笑った。 い、いやなんか違う。論点がずれてる……。

「そして、奏聖久しぶりぃぃぃぃぃ。電話じゃ寂しかったよぉぉぉぉ」

そう言ってお父さんに響が抱きついた。

う、うぇぇぇぇぇぇ。

ど、どこのBL?! 

と言うより、この歳で、ぶ、ブラコン~~~?!
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