夢幻の姫君
「なるほど、霧岬グループを……」

そう言って悩む響の姿はさっきのバカっぽさは無く、真剣そのものだった。
 そうしてればカッコイイのに。残念な男だ。いや、そこが魅力?

 まあいいや。進めなくては

「貴方の知るこのグループについて教えていただきたいのですが」

そう問うと、彼はビクッと体を少し揺らした。心成しか顔が青い。
 いったい何が。

「奴等は、手段を選ばない。利益の為に」

「あなたは、何を?」

そう問うと彼は言うのを躊躇うように下唇を噛んだ。
 何かを耐えるように。膝にある彼の手は、震えている。

「人質、ですよ」

 そう、お父さんが代わりに答えた。
  え、それじゃぁ彼は……。

「恐喝。とでも言いますかね。だから響は……抵抗する術を、失った」

「そっ……」

そんなの法に触れているじゃないかっ!! 
 そう言いたかったけど、言ったて無駄だってわかった。出来ていたら、彼はこんなにも苦しんでいない。家族を失わなくて済んだはずだった。

「彼等は隠蔽に優れていた。ダミーがたくさんあり、調べられなかった。証拠が集められないんだ」

 響は悔しそうにそう言った。 お父さんが慰めるように、肩を叩いた。

奏聖っ!!と抱きついた響を、お父さんは、ウザイ、と押しのけた。
  
 いやいや、もうコントはいいよ。さすがに飽きた。それが素なんだろうね。きっと。

霧岬グループの非道さは確認した。では、彼女たちはどうなっているのだろうか。彼の知る、その人たちなのだろうか。

「霧岬グループの事はわかりました。貴方の娘に接触してみます」

彼は、驚いて目を見開いたが、頷いた。

さて、調べて近づくか……

「ふふっ潜入っ」

そう言っていると

「潜入じゃないぞ、高校に行くだけだし、お前は高校生」

そう言って優が気分を壊した。

「気分の問題だっつーの!!」

そう、叫んだ。

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