夢幻の姫君
 学園長に遅れたお詫びをしながら挨拶をする。
マナーを守れないなんて最低だ、と思って萎縮していると

「いやいや、良いんですよ」

と軽く言われた。何故?

「〝あの伝説〟のブラウニング様がいらっしゃるなんて光栄ですよ。たとえ使われる名前が違ったとしても」

 〝あの伝説〟? まただ。何それ?

「ところで、どちらが霧岬実柚と同じなのでしょうか?」

そう言って話を遮らした。とことん話したくないらしい。
 よし、帰ったら和哉を尋問しようと決めた。

「はい、美羅様の方です」

 私か…………って様?
隼人に視線を向けると、ボソッと

「ここ、うちのグループが経営してんだよ」

との事。

 え?

試験が無かったのは、そういう事?
 ………健人はいったいどこまで手を広げているのやら……

学園長室を出る時に後ろから、声をかけられた。

「霧岬実柚は、ここでは〝松嶋〟実柚と名乗っておりますので、そこをお忘れにならないよう」

〝松嶋〟?

と、いう事は………

「霧岬のトップ…霧岬堅太郎とは、上手くいってないのかも知れませんね」

「憶測だけど…、でも見てから、決める」

そう、言葉を交わして分かれた。

 見てみぬ従妹を想像しながら―――――
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