夢幻の姫君
教室の前に立ち、廊下で呼ばれるのを待ちながら、今朝真琴に言われた事を思い出していた。

「もし分からなかった時の為に、コレを渡しておきます」

そうやって渡されたのは、青い玉。透き通った綺麗な玉だった。

「これは…………?」

「……力の玉。全てを包む空のように、全てを見透かす力の塊。お前が別けた力の2つの内のひとつ」

別けた……?

「お前は自分の力が嫌いだった。特にこれは、な」

嫌いだった? 特にこれは?

「その力によって得た負の感情は、お前が力と共に封印した。覚えてないのも無理は無い」

え? じゃあこれを使ったら、封じ込めたココロが戻ってくるんじゃ……

「だから―――」

「え?」

悲しそうな、痛みを我慢するような顔で真琴は続けた

「吸収するな。しなければ強い力は使えないが、少しなら大丈夫だ。間違ってしまっても〝負けるな〟」

よく分からなかったけど、頷いた。
 真琴の不安がなくなればいいと思って。

そっと微笑んでくれたのを見て、私は走り出した。

「もう。縛られなくていいんだ。普通に生きててくれれば………」

真琴が何故、あんな顔をしていたのか考えずに。

 今更だけど、どうして私は封印したんだろう

「――――さん。―――生さん? 桐生さん!!」

「は、はい!!」

強い声で呼ばれて、ハッと意識を戻す。

「入ってきてくださいね」
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