夢幻の姫君

Hope ~必要なもの~

泣いた目はそんなに腫れなかったから、そのまま教室に戻った。
 隼人は最後まで心配してたけど、大丈夫といって教室で別れた。

「大丈夫だった?!」

教室に入って第一声がこれ。

え? みんなどういう目であの子を見てるの?

感じられる感情は〝恐れ〟

「何もなかったですけれど、どうして皆様はそんな風におっしゃるのですか?」

そう訊くと、言いづらそうにこう言った。

「彼女を苛めてた人を退学まで追い込んだんですよっ!!」

 それ普通じゃないの? あ、はい。そうですか、普通じゃないんですね。
手を回したのは恐らく樋野だろう……。

霧岬に任せると、ばれてしまうからな。きっと。

 そこまで改心したという事なのだろうか、樋野、明は。

いや、まだだ。まだ、信じるには情報が少なすぎる。

こんな私を無視して周りは続ける。

「それに、苛めてた一人の立花さんと一緒にいるんですっ!! 脅して一緒にいるんですよ!!」

脅して……? さっきの様子はそうでもなかった。むしろ、この人は大丈夫とか、感じられたのは恐怖じゃなくて〝信頼〟だった。

見てわかるのにこの人達はどうして彼女を悪者にしたいのだろう。

「それは、本人が言ってたのですか?」

「いえ……。私達の憶測ですけどきっとそうですよ!! でなければ一緒にいる理由がありませんっ」

理由、か。一緒にいるのに必要なのかな? 憶測で判断するなんてただの馬鹿だ。誰だって本音なんて言わないし、言えない。周りの目が怖いから。

その自信はどこから来るのだろう? 見た目だけで判断して、仲良い相手を決めるなんて、最悪だな。 社会に出たら、そんなものは通用しない。

どれだけ仕事が出来るか、どれだけ周りを気遣えるか。

 ただ、それだけ。

イライラして口を開けた。
< 206 / 210 >

この作品をシェア

pagetop