夢幻の姫君
次の日、学校に行こうと思ったけど真琴に止められた。隼人にも。

「心ここに有らずの状態で、学校に行っても意味なんかない」

「……そ、そんな事」

「ないって言えるのか?」

反論なんて、出来なかった。少なからず、ショックを受けたのは事実だったから。

幸せとは何なのかと、考え込んでしまう。人によって、幸せなんて違うのに。
  何も言えなかった私を無感情に見つめて、隼人は出て行った。

 知らない人のような隼人を見て、ツキンッと胸が痛んだ。……気がした。
私の感情は、レンの時と、プロジェクトで壊れてしまったから。

 何が正しいのか、正しくないのか。自分の感情が理解できない。したくないのかもしれないけれど。また、傷つくのが怖いから。

 あんな隼人はしょっちゅうらしい。私の時だけ優しいらしい。
そんなの嘘だ。彼は優しい。ずっと。得体の知れない、化け物と言われてもおかしくない私の傍にいてくれているのだから。

 こんな考えは、また彼らに怒られるかもしれないけど。

部屋にある窓からは、月が見えた。
 太陽が出ているため、月は白く見え、輝いてはいない。

これが真の姿で、夜が偽りというような。

 化粧で素顔を隠す女たちのように、月も太陽の光でこの姿を隠していたのかな。

 化粧をして、綺麗だと言われ、太陽に照らされた月を見て綺麗だと言う。すべては何かに支えられないと評価されないのだろうか。偽りの姿など、意味無いのに。

 偽りのものを好きになっても、長続きなんてしないと思う。隠したって一緒にいれば本質は見えてくる。ココロを見なくても。

 理想と、現実は違う。その人の〝本当〟と、イメージも。

………イメージ………

 人が持つ、判断能力の一端。だと、私は思っている。と、いうよりかその人の本質を見抜けにくくする、駄目な物のような気がする。
 
 それがあるせいで、人は距離をおいたりする。噂に惑わされ、真実ではない事を真実だと思ってしまうことがある。

 そう見えてしまうだけで。 

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