夢幻の姫君
 そんな態度も、人を傷つける。 傷つけた人は、それで傷つくなんて知らずに、ただ毎日を過ごしていく。薄情な世界だと、思った。

そう。人は薄情で残酷。ひどい生き物なのだ。
 
 傷つけて、傷つかないと気づかない。そんな愚かな生き物なのだ。


 愚かだけれど、愛すべき存在なのだとも、私は思う。


 本当の愚か者は、本当の阿呆は、それに気づく事すら出来ないのだから。

失敗を失敗だと認め、それを悔い改めるために、何かをする。変わる為に、幸せになる為に。

 改まってできた、この〝現代〟は幸せで、平和なんだと思う。

でも、人は忘れてしまう生き物。過去の事を忘れてしまう。〝今〟に必要ないからと、覚えない人、失敗が恥ずかしいからと教えない人。また、愚かな人が増えて失敗を繰り返す。

 
 そこまで考えてフッと思う。こんなに上から目線で、ものをとられている私は何なのだと。
 
 ヴェリノウスでは、厄介がられ、捨てられて。〝こちら〟では、実験動物にされ、化け物扱い。

 まるで主に見捨てられた道具ではないか。中古屋で見つけた私を〝物好きな人達〟に使われているだけだ。要らないと言われたら、それで終わり。


 私は、何のためにいるのかと、知りたい時期があった。いや、それは現在進行形だ。

理由がなければ生きていけないなんて事はない。そんな事はありえない。だけど、

 だけど、生きたいと思っても、一人の時はどうすればいいのだろう。支えがなければ人は倒れて前に進めないのに。
 彼らを巻き込みたくないなんて、私のエゴだ。もう、巻き込んでしまっているのに。


助けて、なんて言えなかった。言ってしまえば、助けてくれた人に飛び火がかかる。そんなのだめだ。
 
 だけど、もう、頑張れない。頑張れないよ。

「もう、頑張るのはいやだよ………。だれか、だれか」



――――――――――――助けて。
 


  涙は出ても、最後までその言葉は声に出なかった。

ありもしない光に向かって、私は手を伸ばし続けた。

   闇にのまれた私を、救ってくれる手を求めて

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